臓器提供ご家族のお話

臓器提供ご家族のお話

~平成23年度 臓器提供施設講演会より~
ドナー家族
 
 皆さん、今晩は。今日は家内が好きだった赤い服を着て、一緒に来ました。だから年の割にはええ格好です。家内は68歳で亡くなったのですが、若いときからこのシャツを着てスキーに行ったり、農作業をしたりしていました。ガーベラ01.jpg
 家内は、とても我慢強かったです。小学3年のころに鉄棒から飛び降りて腕を骨折したそうです。その時に「この腕は自分が折ったのだから、その痛みでこれが出来んとか、えらいからもうだめということは絶対に言うな。」と父親に言われたみたいです。家内が倒れた日はたまたま私も家にいました。朝から昼まで山に作業に行き、帰った時には「えらいから5分ほど休む。」と言いました。結婚して46・7年になりますが、それまで祝日でも家内が休んだのを見たことがありませんでした。「そりゃあもう遠慮せんとずっと寝とけ。」と言ったのに少ししたら一生懸命ガレキを運んでいました。私は用事があるから出かけて、帰りに友達のところに寄ってケーキとコーヒーをご馳走になりました。それを飲まずに帰ればまだ早く気がついたのですが、猫舌なので冷めるまで20分くらい待ち、ごちそうになって帰ったら台所で倒れている家内を見つけました。まだ意識はあったので救急車を呼ぼうと言うと、「こうして横になって5分ほど休めば治る。」と言うんです。それでもすぐ家内の妹に電話で相談して、救急車を呼びました。家内は救急車には乗らんと言いながらも吐きそうだからトイレに行くと言い、そのうち寒いと言ってだんだん呂律も回らなくなり、救急車が来た時には意識はなかったです。ただ、日ごろは骨折の影響で挙がりにくい腕がしっかり私の首に掛かっていて、よっぽどえらかったか、最後のお別れと抱きついたと思います。家内を救急車に乗せて私は後を追ったのですが、車があるのに自転車に乗っていて家に引き返したくらい気が動転していました。
 病院では医師から「手術が出来ない所の太い血管が切れている。」と言われました。それならと、「家内は臓器を提供したいと言って免許書入れの中にカードを入れている。」と伝えました。医師にカードを確認させてくれと言われ子供と一緒に探したのですが、動転しているから的外れなところを探したりしてなかなか見つからずさんざん探し、結局台所の食卓の上で見つけました。それを医師に見せ、「取れるものはみんな取って、最後には献体に出してくれと言っていた。」と伝えました。結局その病院で可能な腎臓と角膜を提供することになり、移植コーディネーターから話を聞き何度も意思の確認をされるので、その都度家族にも確認しました。子供も小さいころからお母さんが死んだらみんなあげるように言われていましたから家族の意思も強く、家族に迷いはありませんでした。今でも家族全員登録しています。
 入院中にとても感動したことは、処置の度に声をかける看護師さんの姿です。私が「もう意識がないのに何でそんなことを言うのか。」と聞くと「ただ眼が開かない、口が利けないというだけで分かるんですよ。」と言われました。それで血圧が下がった時に「もし、このまま意識が戻らず亡くなっても、生まれ変わったらもう一度結婚しよう。」って言ってみたら、カッと血圧が上がってそれから10日間心臓が動き続けました。また、娘が「すいませんね。長く生きて。」って看護師さんに言ったことがありました。すると看護師さんは「元気に生きる臓器ならもらう方にとってもすごくいいですよ。」と言われました。家内は「私が薬漬けだと亡くなった時に、臓器をあげる方に申し訳ない。」と言って血圧が高いので沢山の薬をもらっても、日頃から薬は全く飲みませんでした。もし、薬を飲んでいたらこういうことにはなっていなかったかもしれませんが、それが家内の考えでした。本人は献体になることも望んでいたので、今でも自分は献体にもなったと思っているかもしれません。
おおいぬのふぐり.jpg 亡くなって3年経ちますが、今でも毎晩夢に出てきて話をしますので、今夜はどんな夢を見るかなと思うと寝るのが楽しみです。恐らく「もう一度生まれ変わったら結婚してくれ。」と言ったので「もう一度結婚なんて、なんちゃって。」と言っているのだと思います。今頃になっても親戚が大丈夫かと電話をしてくれます。私は「今はなき、妻の愛犬連れ歩き」の日々と答えています。
 
 
講演会出席者の感想
  • 改めて、臓器提供を身近に感じることができた。
  • ドナーファミリーの思いを聞く事ができ、温かい気持ちになった。
  • ドナーファミリーの話しを聞く事でモチベーションが上がった。
  • ドナーファミリーにはえてして暗い印象を持つが大変明るく、前向きな話が聞けて良かった。
  • 今後も経験された方の話を聞く機会があれば良い。
  • 看護学生などにも聞いてほしいと思った。

2012年4月 9日 09:10 | カテゴリー: 提供者・移植者の声
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